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2012/01/25

MEGAUPLOAD閉鎖は海賊行為の抑止に効果なし?



ファイル共有サイトMEGAUPLOADの閉鎖には、海賊行為を減らす効果はほとんど期待できず、むしろアーティストが直接コンテンツを配信する新手法にとってマイナスの影響を及ぼしかねないという懸念もある。(ロイター)

[サンフランシスコ 24日 ロイター]

ファイル共有サイトMEGAUPLOADの閉鎖には、音楽やソフトウェアや映画などの海賊行為の全体量を減らす効果はほとんど期待できず、むしろオンラインでコンテンツを配信するための各種の新手法の芽を摘んでしまうというマイナスの影響すら懸念される。

香港に拠点に置くオンラインストレージサービスMegaupload 件とその幹部7人が起訴されるという先週の突然の出来事を受けて、同様のサービスを手掛ける企業の間では運営方針の見直しを進める動きが広がっている。MEGAUPLOADの幹部らがニュージーランドの裁判所に初出廷し、自らの潔白を主張したにもかかわらずだ。

例えばFilesonic.comでは、ユーザーが自らアップロードしたファイルしかダウンロードできないようになっている。またUploaded.toは米国からのアクセスを遮断している。

ただし米市場調査会社NPDによると、2011年第3四半期にMEGAUPLOADのようなオンラインストレージサービスを利用した米国のインターネットユーザーは全体のわずか3%にとどまっている。一方、同時期にP2Pネットワークを使用したユーザーは全体の9%。P2Pネットワークでは、中心となる組織がほとんどあるいは全くなくてもユーザーのコンピュータ同士でファイルの共有が可能だ。

アナリストによると、Megaupload 件が起訴されたことでBitTorrentPirateBayなどのP2Pシステムの利用が活発になることが予想されるという。今回のような取り締まりが再び行われれば自分のデータにアクセスできなくなる可能性があるため、ユーザーはオンラインロッカーにコンテンツをアップロードすることに不安を感じるかもしれないからだ。

「ファイル共有を行うユーザー自体が増えることはないだろうが、P2P経由でダウンロードされるデータ量は増えるだろう」とNPDのラス・クルプニック氏は指摘する。

だがP2Pシステムはオンラインストレージよりも使い方が複雑なため、全米レコード協会(RIAA)や米国映画協会(MPAA)は少なくとも一部のユーザーはP2Pに二の足を踏むものと考えている。

「オンラインロッカーのほうがユーザーフレンドリーだ。P2Pへの完全なシフトが起きるとは思わない」とMPAAの上級副社長ケビン・シュー氏は語っている。

PirateBay123日、ユーザーに向けたコメントを発信したが、Megaupload 件の閉鎖には言及していない。同社のブログには、PirateBayがファイルコピーの未来についてどう考えているか――デジタルフォーマットの域を超え、「physible」とでも呼ぶべき対象物に進化するとの考え――や、向こう数カ月間にプロモーションに力を入れるアーティストについての情報が掲載されている。

なおPirateBayは先週、現在米国で審議中の新著作権保護法案についてプレスリリースを発表し、自らの役割を米国の建国の父たちになぞらえつつ、言論の自由とすべての人たちの平等のために戦う姿勢を明らかにしている。

中間業者の排除

MEGAUPLOAD2005年からサービスを提供しているが、オンラインロッカーが一般的になってきたのはここ1年くらいのことだ。米Amazon.comAppleGoogleなどの企業はいずれも何かしらの形でこの類の技術を採用し、ユーザーデータのバックアップのほか、複数の端末やユーザー間でコンテンツを共有できるようにする目的でデジタルコンテンツのアップロードをサポートしている。

一部のコンテンツ作成者にとって、こうした新しいやり方は中間業者を飛ばしてエンドユーザーと直接取引するための手段となっている。

アメリカのコメディアンであるルイC.K.は昨年12月、従来のDVD販売方法では印税が少ないとの不満を訴え、自身のサイトでワンマンショーの動画を5ドルでダウンロード販売し、100万ドル以上の売り上げを記録している。

またこれまでにはメイシー・グレイやショーン“ディディ”コムズなどのアーティストもMEGAUPLOADを支持する立場を表明しており、昨年公開されたMEGAUPLOADの広告動画には、こうした著名アーティストらが出演し、MEGAUPLOADの名前を連呼して同サイトへの支持を訴え、注目を集めた。

さらにラッパーのバスタ・ライムスは先週MEGAUPLOADが閉鎖された後、「楽曲は無償でダウンロードされても、アーティストにとってMEGAUPLOADは売り上げの90%を手に入れられる最強の手段になるはず」とのコメントをTwitterに投稿し、MEGAUPLOADへの支持を表明している。

MEGAUPLOAD2011年半ばまで、最も人気の高いコンテンツをアップロードしたユーザーに対し、報酬として「リワードポイント」を提供していた。今回の起訴状によれば、そのことが海賊行為を助長したという。人気の高いコンテンツは得てして著作権を侵害しているものだったからだ。

だが長年インターネットを専門とし、現在はヒップホップサイトの法務顧問を務めている弁護士のジェニファー・グラニック氏によると、著作権を侵害しているコンテンツだけ人気が高いという考え方は「馬鹿げている」という。

「このシステムはすべてのアーティストにとって、制約だらけのレコード会社との契約から抜け出すための方法となる。アーティストが金を稼ぎ、自らの作品を世に出すための非常に重要な手段となり得るものだ」と同氏。

非営利の権利擁護団体である電子フロンティア財団(EFF)の弁護士ジュリー・サミュエルズ氏によると、司法省が著作権侵害の共謀容疑で刑事訴訟を起こすのは異例のことであり、通常、著作権侵害は民事訴訟で扱われるものだという。

EFFはオンラインロッカーサービスをめぐる別の著作権侵害訴訟では、レコード会社に訴えられたMP3Tunesを弁護する内容の法廷助言書を提出している。この訴訟では、多くのユーザーがアップロードしたファイルのコピーを1つだけ保存することによってリソースを節約する重複除外(de-duplicating)の手法が争点となった。

裁判所は結局、削除要請への対応や著作権侵害常習者のアカウント解除などでデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の要件を順守している限り、MP3Tunesの行為は著作権侵害には当たらないとの判決を下した。

今回MEGAUPLOADの閉鎖を受けて、そのほかのファイル共有サービスの間に報酬プログラムを中止したり、一部にはダウンロードをユーザー自身のファイルに制限したりといった動きが広がっていることについて、サミュエルズ氏は驚いてはいないという。

だが同氏によれば、そうした状況は技術革新にとってもユーザーにとってもマイナスだ。

「ここで一番問題なのは、オンラインロッカーが法的に不安定な立場に置かれれば、ユーザーも利用をためらうようになるということだ。そして実際本当に厄介なのは、MEGAUPLOADを合法な目的に使用しているユーザーが今や自身のコンテンツにもアクセスできなくなっていることだ。今回の場合、アーティストがお金を稼げる方法の拡充につながるかもしれない状況において変革の芽を摘んでしまっているのは政府だ。ただし、それが従来型の業界である場合も少なくない」とサミュエルズ氏は続けている。

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